テイクアウトを行う飲食店に潜む出願区分漏れの落とし穴とは?

           

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テイクアウトの現状と盛り上がり

       

 1.テイクアウトの現状

これまで食事といえば、飲食店など外で食事をとる「外食」、自宅で調理して食事を楽しむ「内食」が中心だった。しかし近年、調理済み食品を購入して自宅へ持ち帰る、またはデリバリーして食す「中食」が注目されている。

https://www.inshokuten.com/foodist/article/4632/

中食への参入のうち、テイクアウトを行っている飲食店は45.6%にも及び、ドリンクのみ、ランチタイムのお弁当のみなど、店の都合や環境に合わせて、限定的に取り入れやすいため、じつに半数近くの飲食店がテイクアウト販売を実施しているといいます。

      

画像出典:https://www.inshokuten.com/foodist/article/4632/

       

 2.テイクアウトの盛り上がり -各種アプリの登場-

「UberEAT」

2016年9月に日本に上陸したフードデリバリーサービスで、専用のアプリからレストランにデリバリーを依頼できるサービスが好調。

     

画像出典:https://www.ubereats.com

                

Uberは米国のスタートアップ企業で、自動車配車のサービスを提供しています。配車サービスの知名度を生かし、訪日外国人客を獲得できていることも追い風となり、今後関東圏以外にもサービス領域を広げていく予定とのこと。

                  

「LINEデリマ」

無料通信アプリの大手「LINE」も飲食店に出前を頼めるサービス「LINEデリマ」を2017年7月より開始。

       

画像出典:https://delima.line.me/

       

同社では「今後はユーザーの購入履歴や属性などから、おすすめの商品をプッシュ通知する機能、ランキング機能なども追加していく考えです」と、更なる飛躍に向けてデリバリーサービスに注力していくことが伺えます。

大手企業も参入をしているフードデリバリーサービス。

今後の盛り上がりが予測できると共に、今後テイクアウト販売を開始する企業や店舗が増えることや、テイクアウト事業への注目度の上昇が期待できるのではないでしょうか。

               

 2.テイクアウトの盛り上がり -異業種のカフェ事業参入-

異業種がカフェ事業に参入する動きが非常に活発です。以下一例をご紹介いたします。

         

「寿司(くら寿司)×カフェ」

「コンビニエンスストア(セブンイレブン)×カフェ」

「自動車(LEXUS)×カフェ」

      

「アパレル(ベイクルーズ)×カフェ」

     

若年層を中心に広がる脱アルコールの流れが背景にあることや、コーヒー目当ての来店客が他の商品を購入する副次的な効果が見込まれることなどから、今後も更なる、異業種からのカフェ事業拡大が見込まれると考えられています。

カフェ展開をするということは、テイクアウト販売に直結するということは、簡単に想像できるのではないでしょうか。

テイクアウトの事業を新たに始める場合、「商標取得の観点から気を付けなくてはならないこと。」とはなんでしょうか。

             

権利範囲は足りていますか

飲食店に潜む出願区分漏れの落とし穴とは?

飲食店名・レストラン名は第43類「飲食物の提供」により商標権の保護をきちんとされている方が多いのではないかと思います。
しかし、持ち帰る商品(テイクアウト)の場合は、店内で飲食をするわけではないため、43類の「飲食物の提供」だけではなく、テイクアウト可能な第30類「(商品)」(テイクアウトの種別によっては第29類「(商品)」の登録が必要となる場合があるのです。
例:牛丼の牛の部分のみの場合は29類)の登録が必要となる場合があります。
この「30類」の取得が漏れてしまっているケースは少なくありません。

    

事例を見てみましょう

「天下一品」

こってりスープが自慢の天下一品。中国データベースで「天下一品」を検索した結果がこちらです。

検索結果の一部表示

画像出典:中国データベース(http://wcjs.sbj.cnipa.gov.cn/txnT01.do

天下一品を手掛ける株式会社天一食品商事による中国への出願は確認ができず、第三者による出願が多数確認できました。赤枠で囲んだものは、天下一品の重要区分である30類や43類。非常に多くの出願が確認できます。実際に上海には、天下一品に非常に酷似したロゴを使用したラーメン店も存在しています。

       

画像引用:http://ponkotsunihongo.blog.shinobi.jp/Entry/2601/

日本とホノルル店以外に店舗展開はしておらず、商標出願も行っていないことから中国への進出は考えていないのかもしれませんが、天下一品の重要区分である30類や43類が既に取得されてしまっていることから、今後中国への展開をすることになった場合、自社が使用しているロゴやネーミングが使用できなくなる恐れが生じるかもしれません。

このように、商標を取得していない場合や、第三者に取得されてしまうとどのようなことが起こるのでしょうか。

             

商標を出願しないことで潜むリスクとは

商標権を取得しない場合のリスクは以下のものが考えられます。

1.自分の商標を他人に使用されるリスクがある
自分の商標と似ている商標、同一の商標が他人によって使用された場合、商標登録を行っていないと、原則使用停止を求めることができません。

2.自分の商標を他人に商標登録されるリスクがある
商標制度は「先願主義」のため、早いもの勝ちです。したがって、他人によって
似ている商標、同一の商標が登録された場合、後から商標を登録することはできません。

3.他人の商標権を侵害するリスクがある
他人によって登録された商標を無断で使用することは、他人の商標を侵害することになってしまいます。差止請求や損害賠償請求をされる可能性があります。

「侵害される」側という立場から、「侵害する」側という立場になってしまう可能性があるということが、お分かりいただけるのではないでしょうか。

               

全ての業種において重要なこと

事業をスムーズに進めるための適切な権利保護は飲食業界に限らず、すべての業界において重要です。

また、適切な権利取得を行うことはもちろん重要ですが、登録後、保有している商標と、現在展開している事業内容に不足等がないか」等、定期的な見直しも重要になってくるのです。