「仮想通貨」や「ビットコイン(Bitcoin)」の出願商標の傾向とは -2-

「仮想通貨」や「ビットコイン(Bitcoin)」。利用しておらずとも、最近頻繁に耳にするフレーズではないでしょうか。

ビットコインなどの仮想通貨の人気が高まるとともに、仮想通貨に関係する企業も順調に株価を上げているとのこと。そんな「仮想通貨」や「ビットコイン(Bitcoin)」について、出願商標の傾向をご紹介させていただきます。

 

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[su_heading size=”15″]指定商品”Virtual currency(仮想通貨)”[/su_heading]

世界最大の商標データベース「GlobalBrandDatabase(以下略GBD)」で、指定商品に”Virtual currency(仮想通貨)”を含む商標を検索した結果が1,175件。アメリカ(US)が520件で1番多く、続いてヨーロッパ(EM)の307件、オーストラリア(AU)の110件と続く結果となり、商標名に”Bitcoin”を含む商標の結果と、1位2位は同様の国がランクインする形となりました。

上位3か国で、出願件数が多い権利者は下記通りとなります。

1位:アメリカ(US)

2位:ヨーロッパ(EM)

3位:オーストラリア(AU)

 

[su_heading size=”15″]〈Pick up〉「LOYALTY MARKETING, INC.(日本)」[/su_heading]

アメリカへ6件の出願を行っているのは、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社ロイヤリティ マーケティング。マドプロ出願を利用し、アメリカ、中国、韓国への出願を行っています。

画像出典:Global Brand Database(http://www.wipo.int/reference/en/branddb/)

ポンタや楽天ポイント、Tポイント、地域通貨、そして仮想通貨といった「異なる種類」を、即時交換できる「リアルタイム交換システム」の開発が進んでおり、共通ポイント同士をすぐに交換できるサービスを来年2018年にも始めようとする動きがあります。

これを生み出すのが仮想通貨の中核技術「ブロックチェーン」であり、現物が不要になるスマホ生活時代が、もうすぐかもしれません。

また、楽天ポイントを運営する、Rakuten, Inc.社、Tポイントを運営する、CULTURE CONVENIENCE CLUB CO., LTD.社からは、現時点で指定商品に”Virtual currency(仮想通貨)”を含む出願商標の確認はできず、ポンタカードが先手を打つ形で出願を行っていることがわかりました。

参照:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO14061860U7A310C1X13000/

 

[su_heading size=”15″]〈Pick up〉「TELEFONICA DIGITAL ESPANA, S.L.U.(スペイン)」「BANCO SANTANDER, S.A.(スペイン)」[/su_heading]

 

銀行口座のシステムは銀行が管理しているのに対し、仮想通貨は管理者がいないことが特色です。そのことから、ヨーロッパの5位にBANCO SANTANDER, S.A.(サンタンデール銀行)がランクインしたことは、注目すべき点ではないでしょうか。画像出典:Global Brand Database(http://www.wipo.int/reference/en/branddb/)

上記ロゴの「Yaap」は、銀行(BANCO SANTANDER, S.A.)と電気通信事業者(TELEFONICA DIGITAL ESPANA, S.L.U.)の共同出願がされており、「Yaap」関連商標が複数、ヨーロッパに対して出願されています。

「Yaap Shopping」は数十万の潜在顧客と対話できる仮想ショールーム。BANCO SANTANDER, S.A.が出願しているすべての商標で、36類を対象に指定商品に”Virtual currency(仮想通貨)”を指定した出願がされていました。

 

Bank(銀行)の仮想通貨への進出

指定商品に”Virtual currency(仮想通貨)”を含み、権利者に”Bank(銀行)”を含む権利者での検索結果は、pndingとactiveを合わせて7件。

その内、5件の出願を行っているのが「National Australia Bank Limited」。ナショナル・オーストラリア銀行は、オーストラリアの市中銀行。

2017年7月より、オーストラリアでビットコインはお金同様に二重課税の対象にはならないようにすると決定し、政府は「オーストラリア国内で革新的な仮想通貨事業をより容易く行えるように」計画していると明言。また、世界の主要銀行が仮想通貨技術を利用した国際送金ネットワークを構築しようという動きがあることから、他国に比べ、オーストラリアの銀行が、世界的にも商標出願の動きが早いことに繋がっているのかもしれません。

参考:http://www.bibitpost.com/archives/437

 

[su_heading size=”15″]〈Pick up〉「MINDARK PE AB(スウェーデン)[/su_heading]
ゲーム業界×仮想通貨」

権利者上位に、ゲーム業界が複数存在していることも、仮想通貨の出願商標での特色であると考えられます。

画像出典:https://www.google.com/url?sa=i&rct=j&q=&esrc=s&source=images&cd=&ved=2ahUKEwiV6qbPrIvaAhUENrwKHbE9Ao8Qjxx6BAgAEAI&url=https%3A%2F%2Fwww.entropiauniverse.com%2F&psig=AOvVaw1_W5LoOJkVyzM5icQsC1tv&ust=1522200426330416

仮想現実の会社であるMindark PE ABは、安全なアバターの開発と現実の商品の製造および取引に基づく現実の通貨を支援する実行可能な経済の仮想現実のシステムと世界を構築するため、1998年に創設されました。Mindark PE ABは、世界最大の現金経済の多人数同時参加型オンラインゲームの仮想現実プラットフォームであるEntropia Universeの開発者。

Entropia Universeは、リアルタイムでリッチメディアを視聴したり、リアルアイテムやバーチャルアイテムとの取引、が可能な最先端技術を搭載したゲーム。 そのゲーム内で使用される仮想通貨「PED」は、米ドルとの固定為替レートが10:1。 Entropia Universeは、200以上の地域から822,000以上の登録アカウントを持っています。

Mindark PE ABが”Virtual currency(仮想通貨)”で出願している件数は15件。その内10件が、ゲーム内で利用される仮想通貨「PED」関連の商標であることがわかります。

画像出典:Global Brand Database(http://www.wipo.int/reference/en/branddb/)

ゲーム内で利用する仮想通貨「PED」は下記区分及び指定商品(一部抜粋)での登録がなされていました。

  • 09類:仮想通貨、電子マネー、電子通貨の形式の電子データ。オンラインゲーム用。仮想通貨の形態のコンピュータプログラム。
  • 16類:印刷物;仮想通貨を得るために使用できる印刷された厚紙スクラッチカード。
  • 36類:電子財布の利用を促進する金融サービス。グローバルコンピュータネットワークを介してオンラインコミュニティのメンバーによって使用される仮想通貨を提供する形での金融サービスの提供;バーチャル通貨と電子マネー取引に関する仲介。

ポイントカード、銀行、ゲーム業界等の様々な業界により、仮想通貨の運用が考えられていたり、実際に運用されていたりすることが伺えました。今後もお金の支払いが発生することが考えられる幅広い業界で商標出願の動きがあることが考えられます。また、世界各国で仮想通貨における規制法の策定等が検討、実施されており、各国の規制法の内容によっても事業の盛り上がりが左右されることが考えられ、引き続き動向に目が離せません。