IT/WEB業界の商標出願のポイント

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IT/WEB業界の事業スピードは非常に早く、事業を円滑に進めていくにあたって重要な商標の権利化について計画的に対応をしていく必要があります。

 

IT/WEB業界で必要な商標区分は?

IT/WEB業界といっても多くの事業が存在します。どのような商標区分を押さえていけばいいのか、具体的な例を見て確認をしてみましょう。

名刺管理ソフトで有名な”Sansan株式会社”の日本の商標登録情報を見てみると、sansan(第5674975号)にて、下記のように登録をしています。

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●09類 : コンピュータソフトウェア,ダウンロード可能なコンピュータソフトウェア,コンピュータソフトウェアを記録させた記録媒体,情報処理装置,コンピュータ

●35類 : コンピュータによるファイルの管理,文書又は電子媒体データのファイリング,コンピュータデータベースへの情報構築,コンピュータデータベースへの情報構築に関する情報の提供及び助言,コンピュータデータベースへの情報編集,コンピュータデータベースへの情報編集に関する情報の提供及び助言,データ入力に関する事務の代行

●42類 : コンピュータソフトウェアの提供,アプリケーションサービスプロバイダーによるコンピュータソフトウェアの提供,コンピュータソフトウェアの貸与,電子計算機の貸与,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守
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上記を見てもどんな時にどの区分(事業範囲)を押さえればいいかが分かりません。
事業に当てはめると、下記になります。

●09類 : 携帯等アプリ提供(ダウンロードして利用するサービス)、名刺スキャンマシン
●35類 : 活用セミナー開催
●42類 : ウェブ上で利用するサービス(ダウンロードせず利用するサービス)、APIの提供

様々な会社の例をみると下記のような表にまとめることができます。

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区分 指定商品 代表例
9 電子機械器具及びその部品、ソフトウェアなど パソコン、ダウンロードアプリ
12 乗物その他移動用の装置など ドローン、自動運転自動車
35 広告など SNSサイトの広告募集行為
36 金融、保険、不動産の取引など 電子決済サービス
38 電気通信など IP電話、メッセンジャー
41 教育、訓練、娯楽、スポーツ、文化活動など オンラインゲーム
42 科学技術に関する調査研究、電子計算機又は
ソフトウェアの開発など
システム開発、API提供、ウェブサービス
45 法律事務、その他役務 SNSサービス

※IT/Web業界のサービスを捉えることが難しいため、各国毎に区分の揺れが多少あるため出願時の確認が必要です。

 

指定商品は事業内容と伴っているか?

商標は登録を一度したからといって、今後同一の文字列・ロゴでの取得をすることが不要というわけではありません。新しい事業展開があった場合などには、都度商標区分の確認が必要です。検討をする時期の例は以下の通りです。

■ 新規事業立ち上げ時
■ 海外進出検討時
■ 商標制度の変更時

 

商標は正しく使用しないと消滅してしまうおそれあり

商標はせっかく取得しても、正しく使用をしないと消滅もしくは、他社から取り消されてしまうことがあります。前者はアメリカが典型です。5年目~6年目にかけて、商標を使用している証拠が必要になります。後者は日本が該当します。登録から3年間使用がみられないと、他社がその商標を利用したい場合には、不使用取消審判をかけられてしまうことがあります。

事業継続が危ぶまれてしまってはいけないため、1年に一度商標登録しているサービスについて、使用状況を確認することをお勧めします。正しく使用をしていないと商標法上の使用にあたりませんので、当社も含め専門会社に確認を取ることをお勧めします。

 

どこまで商標は取るのか?

アプリやウェブ上で利用するサービスについて、例えばマイクロソフト社の“skype“の登録状況をGlobal Brand Databaseで見てみると、米国、欧州、東南アジア諸国、オセアニア、中東あたりで取得をしています。https://www.skype.com/を確認すると、該当国・地域のサービス提供をしていますので、事業展開国に合わせて取得しているようです。

ただ、アプリやゲームなど、流行り廃りの早い事業については、商標を取得していないケースも最近では見受けられます。そうした場合のリスクとしては、下記の通りです。

■ 貴社ブランドの使用停止
■ 損害賠償請求

コスト、リスクとの兼ね合いかと思いますが、商標取得をしない場合には、最低限先行類似商標があるか否かの調査をすることをお勧めします。

 

上手に制度を利用

第三者との関係で優位に立つために利用をしたほうが良い制度は、パリ優先権主張です。日本(第1国)の商標出願日から6ヶ月以内であれば、外国出願をする際にパリ条約等に基づく優先権を主張することができます。適法に優先権を主張すれば、外国への出願が日本の出願日(第1国の出願日)に行われたものとして扱われます。
第三者が類似したブランドを出願してしまい、海外での展開が止まってしまうことはよくあります。そうしたことにならないように、この制度は上手く利用をしたいです。

また、事業の様子をみたいというときも有効です。IT/WEB業界はドックイヤーです。半年の猶予は、一般的な業界では1~2年の時を意味します。この間に海外展開の見極めをし、必要な国だけ追加の出願をすることが可能です。当然ですが、コストも無駄にはなりません。アップル社やグーグル社などの出願を見ていると、この制度を適宜使用しています。

 

上手にコストをコントロール

パリ優先権だけでなく、コストのコントロールという点では、制度上まだ利用することができることがあります。分納制度です。世界的な制度ではないですが、日本にはこの制度があります。

IT/WEB業界のサービスはサイクルが早いです。10年もサービスが続くことは多くないと思います。その場合、商標を10年間維持する費用はコスト高になります。5年間維持の分納制度を利用して、不要なコストを支出しないことは有用です。

 

最後に

当社では、立ち上げから10数年で1,500社のお客様のサポートをさせていただいております。IT/Web業界のサービスを商標出願する際には、そもそもサービスの正しい理解が必要です。その点GMOグループの知財系会社である当社であるからこそ、ITに強く、適切なヒアリングとブランド保護ができると考えます。

是非一度ご相談ください。